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Channel: 与論島クオリア
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「沖縄の山の神について」(上原孝三) 3

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 ぼくたちは、ウンジャミとシヌグについて、女性が男性性の強い神をいただき、男性が女性性の強い神をただくのは、一種の異性装だったのではないかと考えた。

 キラハニ  女性性(太陽)
 スク    女性性(干瀬の子)
 ウンジャミ 男性性(蛇)

 ここで、もうひとつ視点を加えると、シヌグでは「キラハニ」が、祭儀の対象から除外されている。キラハニは、貝精霊だから、そう考えると、これだけ大きな存在が除外されているのが不思議に思える。また、肝心のスクは、主となる動物が不明のままだ。

 そこで、キラハニが除外されているのは、この祭儀が「貝」以前に遡る古さを持っているからだと仮定してみる。だとしたら、貝以前のトーテムとしてのジュゴンが浮かび上がってくる。スクの背後に控えている主なる動物は、ジュゴンなのではないだろうか。

 浜比嘉島の平島では、浜下りのときにこう歌われる。

 ザンの魚も、スクの魚も
 引き寄せて、抱き寄せて、
 オナリ・エケリが肝誇り、胸誇りみそれ
 (平島での神歌(ウムイ))

 これは、ザンもスクも重要な「魚」だと考えられたことが示唆されていると捉えてきた。しかし実は、ザンの精霊の化身態がスクであることを示唆したものなのではないだろうか。

 ここで、「オナリ・エケリ」が出てくるのも気になるところだ。ザンがトーテムであった段階は、兄弟姉妹婚、つまり、オナリとエケリの交わりが集団の核になっていたからだ。

 スクはジュゴンの精霊、ウンジャミは蛇の精霊の化身態。そう仮説してみよう。


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