桜井徳太郎の『霊魂観の系譜』は、書名から期待したものは得られなかった。というのはぼくのわがままで、学問的方法論を説くモチーフがぼくには遠かった。
日本ではタマシイのことをタマともいう。(中略)誕生し成長し、そして死滅する人間や動植物の変化、さらに雨風、洪水、火山の噴火、日月星辰などの気象や天象、これらの神秘的現象は、ことごとくそれを生起せしめる根源的霊力すなわちタマのはたらきによるものと判断していたのであろう。つまりアニミズムの世界で暮らしていたとみてよい。
この記述からは、タマの五感には霊力が含まれているように見える。
印象的だったのは、折口信夫の言葉だった。
現代の民俗を考察していても、すぐに古代の方から迎えに来てしまう。・・・・それほど古代が身近な世界であった(大藤時彦「先生の学問」)。
「古代の方から迎え」に来る。いいですね。これは折口の資質を語ったものでもあるのだろう。