体内言語から見た琉球弧
吉本隆明の『ハイ・イメージ論2』、『母型論』と吉成直樹の『琉球の成立―移住と交易の歴史―』から、体内言語である遺伝子からみた日本列島人を整理すると下表のようになる。...
View Article映画『トテチータ・チキチータ』-頬を撫でる霧雨
映画『トテチータ・チキチータ』は、2011年の10月に福島で撮影されている。これは重たい事実だが、それはこの作品が震災と原発という問題の中心に向かって題材を採ったことを意味していない。むしろ、企画が具体化しかけたときに、震災と原発事故は起こり、実現を断念しかけた経緯を持っている。...
View Article「奄美大島開闢神話の民俗学的研究」
町健次郎の「奄美大島開闢神話の民俗学的研究」は、地名としての「大島」の古名が「奄美」であることに疑問符を付し、その根拠を宙吊りにすることによって、開闢神話を神話としてではなく信憑として捉え、奄美に関わった、主に大島知識人のアイデンティティの構造を明らかにしたものである。 町は書いている。...
View Article『酒とシャーマン―「おもろさうし」を読む』とナ行音の前の撥音化
吉成直樹の『酒とシャーマン―『おもろさうし』を読む』は、「おもろそうし」が思われている以上にシャーマン的な側面を持っているのではないかとして、その要素をいくつか抽出してみせたものだ。 「しけち」も「ち」も酒を意味するが、「しけ」は「神がかること」を意味するのではないか。神がかるということは精神が別の次元に転移することで、それは酒を飲んだ時の状態と同じだから、「ち」に「しけ」を冠したのではないか。...
View Article向原祥隆の鹿児島県知事選、出馬表明に寄せて
5月22日、南方新社代表の向原祥隆(むこはらやすたか)が、6月21日告示の鹿児島県知事選への出馬表明を行った。川内原発1、2号機の再稼動を拒否するか否か、3号機増設の白紙撤回を九州電力に申し入れるか、の点について現職の伊藤知事に公開質問状を提出。伊藤知事による、これに回答するつもりは「全くありません」という応答を受けてのものだ。 出馬表明の際の記者会見の模様も見ることができる。...
View Article『名瀬のまち いまむかし』
少なくとも高度経済成長前までは奄美諸島の出身者にとって奄美大島、ことに名瀬は離島する際のいちばんの進学先であり就職先であり、唯一の都会であった。『名瀬のまち いまむかし』は、その名瀬の変遷をできる限り歴史を遡って、ことに近世以降に焦点を当てて紐解くものだ。...
View Article「かなしゃ」No.3
楽しみにしていた「かなしゃ」が手元に届き、早速読んだ。今回も充実の内容だ。 「かなしゃ」の底で流れているのは「旅人(たびんちゅ)」の視線だ。「旅人」とは何か。...
View Article「吉本隆明と3.11以後の思想」
10月13日、新宿の都庁近く、新宿住友ビルの「朝日カルチャーセンター」に、加藤典洋の講演を聴きに行った。テーマは、「吉本隆明と3.11以後の思想」。吉本亡き後、どのように考えていけばよいのか、そのことが切実な者にとってはこのテーマはタイムリーだし、その場が吉本が『ハイ・イメージ論』で「多空間論」を展開したときにサンプルとして採った新宿の超高層ビル群のなかだったのには、ちょっとした感慨も覚えた。...
View Article「試行」での原発問題への発言を振り返って
福島の原発事故が起きる12年前の1989年2月、吉本隆明は「試行」において原発問題について4つの層で検討している。 1つ目jは「安全性の層」。 吉本は技術者が技術者として議論している大前研一の『加算混合の発想』を引く形で安全性についてコメントしている。...
View Article裾礁型サンゴ礁の類型化
「地形的特徴と海水循環流構造特性に基づく裾礁型サンゴ礁の類型化」が試みているのは、サンゴ礁を「保全・管理」するために「負荷量の把握のみならず、河口等を介し海域へ供給される負荷物質がサンゴ礁海域内、特に礁池内でどのような挙動を示すかを把握する」ために裾礁を類型化することだ。 キーワードになっているのは、reef-cell と wave set-up。 reef-cell...
View Article与論島、2012年の台風受難
わずかひと月の間に三度も台風が島を直撃した2012年は、3500年を超える与論島史のなかでも特異な年だったに違いない。与論を通過した日に焦点を当てれば、台風15号・ボラヴェンが8月26日。その21日後の9月16日に台風16号・サンバ。さらにそのわずか8日後の9月29日の台風17号・ジェラワット。三つの台風はわずかひと月余りの間に次々と島に襲来した。...
View Article『与論島の古文書を読む』
先田光演が解読と解説を試みた『与論島の古文書を読む』が手元に届いた。本来ならこれは与論人(ゆんぬんちゅ)の手によってなされるべき仕事だという悔しさはあるが、それ以上に先田の労に感謝する気持ちが先立つ。 読み下し文を頼りに「猿渡文書」の読解を試みるが、自ずと限界も見えやすかった。古文書をじっくり読み研究する暇を持たない者にとっては、『与論島の古文書を読む』のような労力に頼らざるをえない。...
View Article『与論島の古文書を読む』への応答
わが与論を取り上げてくれた先田光演の『与論島の古文書を読む』をめくっていたら、後半部分で『奄美自立論』への言及があって驚いた。これには応答しないわけにいかない。 少し長くなるが、引用する。 二〇〇九年は薩摩軍が琉球王国に攻め入って降伏させ、勝者の論理で奄美諸島を割譲し、直接支配してから四〇〇年が経過した記念の年であった。...
View Article『むかし原発 いま炭鉱 』
今年出版された『むかし原発 いま炭鉱 - 炭都[三池]から日本を掘る』には与論島のことも一つの章が割かれて出てくる。 与論人夫たちの賃金は安かった。一緒に働いていた朝鮮の人夫よりも安かったそうだ。とても暮らしてはいけず、仕事の合間に付近の山畑を耕し、自分たちの食べるさつま芋や野菜をつくり、豚や山羊を飼っていた。(p.267)...
View Article境界が溶けるときの放心
与論では境界は溶けやすい。 さざ波となって浜辺に届く海は、白砂を静かに洗うけれど、透明と白の共演はどこまでが波でどこまでが砂浜なのか見分けにくい。おまけにその波形は定まることはなく押し寄せる波のたびに形を変える。しかも、大潮ともなれば、沖あいのリーフまで珊瑚礁が浮上して、その向こうに外海が広がり、陸はその範囲を広げる。ほんとは海と陸を区別する線を引くのは難しい。...
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