国頭の安田ヶ島(アラハ)は、「海からあがってくる神の足だまりの場」(外間守善『南島文学論』)と言われる。イノー(礁池)にあった「あの世」の典型例だ。
安田村の隣りは伊部村。
安田は、もともとは「中空」を指す「awa」から転訛した言葉だ。
awa > aba > ara > ada
気になるのは、隣りの「伊部」だ。これも「awa」地名ではないだろうか。
awa > aba > iba > ibu
そうやって思い出すのは、「いび」だ。「いび」も結局は、「青」地名に由来しているのではないだろうか。
八重山のいびと言ふ語は、香炉の事であると思ふが、先輩の意見は各異つて居る。
八重山には、御嶽に三つの神がある。又、かみなおたけ・おんいべおたけと言ふのがある。八重山のみ、いび又はいべと言ふ事を言ふが、他所のいびとうぶとは異つて居る。うぶは、奥の事である。沖縄では、奥武と書いて居る。どれがいびであるか、厳格に示す事は出来ないが、うぶの中の神々しい神の来臨する場所と言ふ意味であると思ふ。八重山の老人の話では、御嶽のうぶではなくて、門にある香炉であると言つて居る。即、香炉を神と信ずる結果、香炉自体をいびと言ふのである。(「琉球の宗教」)
ただし、背負った意味は異なる。
1.地の島という意味での「アヲ」
2.あの世としての「アヲ」
3.あの世の封印の場としての「アヲ」
「いび」は、3の段階に当たる。2で聖性を帯びることになる「アヲ」は、3で「イビ」へ変態して、かつての「アヲ」封印の意味を担う。
ひょっとしたら、「産土神(ウブスナガミ)」の産(ウブ)も「アヲ」由来なのかもしれない。人間の生命も「あの世」からやってくると思われていたわけだから。