豊玉町の森(シゲ)、川(フチ)、山(タケ)について(鈴木正崇「対馬・二位の祭祀と村落空間」「日本民俗学」151号)。
シゲとは、集落内にあるコンモリ茂った森。伐ってはならない夫婦杉という古木がある。シゲの神へは盆踊りの奉納もあった。フチの神への奉納も意図している。森を神聖視する「霊地」としての性格。
フチは、川の湾曲している所や、木の淀んでいるところ。神霊が宿り雨乞いの祈願場とされる。一方、河童が人に悪さをするというイメージもある。タケやシゲに比べると霊地の性格は弱い。
タケは、高い峰のこと。ヤマより高いとされ、神聖な霊地として崇拝される。盆踊りの奉納のときは、天神嶽が意識される。タケは通常、麓から拝する。
シゲ(森)、フチ(川)、タケ(岳)という同心円的聖地構造。シゲは、それ自体が神聖視されるとともに境界のカミの意味合いがある。集落内外に、シゲとタケを設定し、その間の干渉地帯にフチを配する。神社は浜辺ないし山腹にある。シゲ地のある少し外側の外縁部にあるのが神社。
この記述からみれば、シゲは山(陸)の動植物の精霊、フチは水の精霊が宿っている。シゲには、人間の精霊も含まれている。シゲは、かつての「あの世」でもあるのだ。
タケは、遠隔化された他界。フチは、その境界部にもなったのではないだろうか。