松前健は、サルタビコについて、「伊勢・志摩地方の海人の奉じていた男性の太陽神であろう」としている(『日本神話99の謎―神々のパンテオンで何が起こったか』)。アメノウズメに連れられて五十鈴川に行くのも、ヒラブ貝に挟まれて海におぼれるのも、三種の海の海霊が出現するのも、みな伊勢との関係を示している。
猿神としての性格も、太陽神と矛盾しない。道祖神、性神としての性格も。サルタビコの長大な鼻はリンガの変形だ。
一方、裸身を露わにしたウズメの行為は、「実際の巫女たちの儀礼的行為の反映なのである」。
松前によれば、ウズメの氏族は、「伊勢土着の古い太陽神・性神サルタビコを奉じ、その神妻として性的儀礼を演じる斎女を出す家であったことを示している」。
ぼくたちはここで、もともとはウズメの方が主役だった。太陽の精霊は、女性であるウズメの貝から生み出されていた。サルタビコもその流れを汲んでいると理解していることになる。