祝女が手にかざす神扇について、下野敏見は書いている。
神扇はテロギ(テルコ扇)ともミガキともいわれる。テルコは太陽。ミガキとは扇のホネに磨きをかけた末広がりの意味。神扇はノロ祭りのとき、開いた扇をノロが両手で持っている。扇の表面の日輪は『おもろさうし』にティダ(太陽)と謡われた琉球王を表し、それを守る二匹の鳳凰、それを喜びめでる瑞雲。表面に描かれた世界は琉球王の統治する琉球王国と国王の政治的権力を示す。月と瑞雲の裏面はティダに相対する王妃の世界を表し、牡丹の花が咲き、蝶が飛び交う楽土を描いている。
本の画像は小さくてよく分からないが、瀬戸内町の文化財紹介の下方に、嘉入のミガキ(神扇)が載っている。
ここではすでに「太陽」は「王」と結び付けられているが、もともとの意味はそうではなかった。というか、そうではなかった時代のデザインを保存しているように見える。
鳳凰と瑞雲を蛇に、牡丹の花を貝に置き換えて祖型を辿れば、その意味はどうなるか。
表 太陽と蛇(女性と男性)
裏 月と貝(男性と女性)
となって、をなり神の世界、言い換えれば、宗教をつかさどる祝女と政治に任じる兄弟の世界を表したものとして見えてくる。