「ふたりの「狂うひと」-島尾敏雄とミホの闘い」(瀬戸内寂聴 梯久美子)
一方は言いたいことを言い、他方は言われたいように言われている。無惨という思いを禁じ得ない。島尾敏雄とミホがそうなのではない。対談者の二人のことだ。 ここでは島尾ミホは、魅力的だが不気味な存在として捉えられている。梯 初対面の第一声が「あなた、ゆうべ私の夢に出てきましたよ」だったんです。「夢で見たお顔とおんなじ」って。本当だったのか、ある種の自己演出だったのか、今もわかりません。瀬戸内...
View Article「サンゴ礁の環境認識と資源利用」(渡久地健)
渡久地健は、奄美大島大和村の貝捕獲について、潜水の必要なサンゴ礁外側斜面では男性が捕獲し、内側では女性が捕獲すると整理している。 サンゴ礁の外側=礁斜面(ナダラ・スニウトゥシ) カインミャ・タカセ・カタンミャ-男性 サンゴ礁の内側=礁原・岸辺(クィシィ・ヒジャ) カタンミャ・エガル・アナゴ-女性...
View Article宮古島の霊魂観 2
こんどは別様に考えてみる。刺青の文様をみれば、宮古島の霊魂は、霊力から独立した概念にはなっていないことに特徴がある。独立した概念の場合、霊魂の作用を受けて、霊力がもうひとつの霊魂と見なされるようになるが、宮古の場合、霊魂のほうがもうひとつの霊力と見なされているといった方が妥当なのだ。 ここで、タマスにしてもマウ神にしても、「魂」や「守り」からきた新しい言葉だと見なして、これに頼らないことにする。...
View Article「ジュゴンの乱獲と絶滅の歴史」(当山昌直)
当山正直は、『沖縄のジュゴン』(盛本勲)での沖縄、宮古・八重山の出土跡の分布状況について、骨製品の出土に注意を促している。骨製品の場合は、出土したからといって必ずしもそこにジュゴンが生息していたという証拠にはならない。島内の、または離れた島との交易、またほかの島に住む人からのプレゼントされた骨製品の飾りということもありえるのである。...
View Article「沖縄における原始漁法」(西村朝日太郎)
「沖縄における原始漁法」(西村朝日太郎、『文化人類学』1967)から。 大神島では、鮑(あわび)は手で捕らえる。宮古島の久松では、蟹の踏み捕えが女によって行なわれるが、男がこれを行なうと笑われる。干潮の時に蟹は砂中に潜るから女は乳辺りの深さまで水中に入り、足の裏の感触によって蟹の所在を確め、他方の足の拇趾と中趾との間に蟹を挟んでつまみ上げる。...
View Article「貝-太陽-女性」と「蛇-月-男性」
いまのところの仮説だが、サンゴ礁期の象徴のトライアングルを図示しておく。 図の意味は、「貝-太陽-女性」と「蛇-月-男性」ということ。ただ、貝は月も生み、もうひとつの太陽ともみなされている。「貝-太陽-女性」ははっきりしているが、「蛇ー月-男性」については、アカナーという蛇と貝の童子が月に住むという伝承や、死の起源ではアカリヤザガマが月に置かれることになるが、彼も男性であることから推理したものだ。...
View Article牛と他界
来間島の島建てには、牛が出てくる。来間豊年祭を毎年やっていたが、止めたとこと、オガビシという干瀬のある東の埼から恐ろしげな大きな赤牛の牝牛が飛ぶようにやってきて、来間の人間をば、全部ひっかけて、ナガピシへ連れて行って一人もいなくなってしまったということであった。...
View Article蛇と鷲
アドミラルティ諸島の神話。指を切った女が、血を貝殻に貯めた。血は二つの卵となり、一つから鷲が、一つから蛇が生まれた。鷲は空を飛び、蛇は血を這った。鷲は魚を捉え母に持っていくが、蛇は捉えたものを自分だけで食べて母に何もあげなかった。...
View Article死者の助力
久しぶりに棚瀬襄爾の『他界観念の原始形態.』を紐解いてみる。ニューギニアとメラネシアから、死者が生者を助けるという観念を抽出してみる。 トレス海峡西部諸島。最近死んだ死霊(マリ)を恐れるが、死んで時間の経った死霊(マーカイ)に対しては親愛の情を持つ(N1)。...
View Article「沖縄の浦嶼子伝説」(水野祐)
島尻の南風原(ハイバル)にある穏作根岳(オンサネダケ)という拝所の頂上に立つ桑の古木にまつわる伝説(水野祐『古代社会と浦島伝説』)。 泡盛に酔った男が与那久浜で目を覚ますと黒髪を握っている。持ち主が分からない。同じ浜で夕刻佇んでいると、「私のものです」と艶やかな乙女が言う。お礼に私の家にお連れしますといって、二人で波の上を歩き、「やがて千尋も知らぬ海底へと沈んでいった」。...
View Article「プロトタイプ論 母界論」(青木正次)
青木正次の母界論を手がかりに考えてみる。 食という自己表出では、自己は「食い吐く」ものとして現われる。摂取と排泄という観念像。自他未分化。「蛇」。たぐり(嘔吐物)や糞尿の排泄が神に成る話や、異類が子を排泄するように生む話が、排泄が産出という観念像に転位するさまを伝えている。食って吐く食相から生む性への相へと転位するのである。 ここから筋道を立ててみると、...
View Article「生命の表出史6」(青木正次)
『たにし女房』(中国民話集、岩波文庫)は、琉球弧の異類婚姻譚と同じく、女は捕えられる位相で登場する。 ところがこ」の日は、網を投げるたびに、このタニシがかかるので、とうとう持ち帰って瓶で飼,うことにしました。それからはジュイションが漁からもどってくると、服はきれいに洗ってあるし、食事の用意もできています。...
View Article「北米先住民のコスモビジョン」(後藤明)
後藤明は、北米の民族誌を参照し、次のように整理している(「北米先住民のコスモビジョン」(『南山考人』44、2013)。 春分、夏至、秋分、冬至について、北米の先住民では、圧倒的に関心は「至点」に向いていて、「分点」は必ずしも意識されていない。少なくとも、「至点」と「分点」は等価ではない。...
View Article「カナダ先住民ハイダ族の神話世界--トーテムの契約--研究ノート」(山崎邦夫)
山崎はワタリガラスの物語を詳細に検討しているが、ここではトーテムポールに着目する(「カナダ先住民ハイダ族の神話世界--トーテムの契約--研究ノート」『立教大学ランゲージセンター紀要』)。 テイナス・ハイダガーイ(サケの人々)。...
View Article「誰かとうまくいかないのは、本当に相手のせいだろうか」(宮国優子)
浜辺に行くと、蟹たちは一斉に、そこここに掘ってある白い穴のなかに逃げ込んで姿を隠す。そのままじっと待っていると、もう大丈夫かなというように、おもむろにまた姿を現す。人見知りとはこういうことだと、よく思う。...
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