久しぶりに棚瀬襄爾の『他界観念の原始形態.』を紐解いてみる。ニューギニアとメラネシアから、死者が生者を助けるという観念を抽出してみる。
トレス海峡西部諸島。最近死んだ死霊(マリ)を恐れるが、死んで時間の経った死霊(マーカイ)に対しては親愛の情を持つ(N1)。
キワイ・パプアンでは、死んだ両親の助言を得るために頭蓋を掘り出してその側に寝ることもある。墓以外の場所で供養も行なわれて助力を願う祈祷も行なわれる(N12)。
ヤビム族では、一般には死霊を忌み恐れる気持ちが強いが、生存者を助けるという考えもある(N16)。
ブカウア族では、死霊は単なる恐怖の対象ではなく、生者を畑作において助けるという考えもある。祖霊は開墾地の切り株を見守る(N17)。
カイ族。死霊は悪さをなすが、一方では物質的な助力も与え、特に畑作や狩の獲物を恵む。
モヌンボ族。死者は人を殺しもするが、戦いや狩りの際、生者を助けもする。死者は生者との単なる分離ではなく、人々はらくらくと通話する(N21)。
ツムレオ族。死者が生者を助けるという考え方も強い(N24)。
ブカ、ブーゲンビル島では、死霊は生者に悪を働くことができる。しかし、死霊の名を呼んでタロ芋畑を拓いたり、重要な漁労に出かけたりするときに助力を乞う(M10)。