慶世村恒任の『宮古史伝』。「天太の世以前」の「山立御嶽」。
押しかけ女房としてやってきた「仙女」と「仮寝」すると、一夜で家が建ち、仙女が持参した「小さな布袋」は一生食べても尽きない「米」を提供する。この「布袋」は胞衣のことだ。
そしてふたりは、「スズという大魚」になって布袋を持って、ミナコザの沖へ飛び込み失せる。異類婚姻譚としてみると、この結末はとても面白い。ふたりとも動物に返るのだから。
スズとはどんな魚だろう。高橋そよの「魚名の命名法とその特徴について-波照間島、鳩間島、佐良浜の事例から-」によれば、佐良浜では、マトウトビウオを「スズー」と呼んでいる。トビウオは、海面を突き破って空中へと出る魚で、精霊の由来からは蛇魚という聖なる魚だから、これが「スズという大魚」のことであっても不思議はない。
ふたりの子の「おたはる」が女神として山立御嶽に祀られる。トーテミズムの後の神という順番が踏まえられている。