前4期の土器について伊藤慎二は書いている。
初頭の「沈線文系」は、「4~6単位のM字状・山形の口縁部突起をともなう例がある」。古段階では様式としての「斉一性」が弱い。刷毛目状整形を行うが、外面側は施文に先立って平滑にナデ消す場合が多い。
前葉から後葉にかけた「籠目文系」では、「4単位の波状口縁と平口縁があり、上面観が四角形状になる例もしばしば存在する」。内外面とも刷毛目状の整形を行う。
古段階では口縁部が肥厚して胴部との段差があるが、新段階にはほぼ消滅する。籠目状の文様が指標的。
新段階では、籠目文は直線的に変形簡略化される。
中葉から後葉にかけた「点刻線文系」では、内外面とも刷毛目状の整形を行うが、口縁部のみナデ消す場合がある。「4単位の波状口縁と平口縁の例がある」。
中1段階で、「瘤状に肥厚した口縁部の山形突起が出現する」。「くびれた頚部をもち、胴径が口径を上回る資料」が顕著になる。ほぼ沖縄に分布が限られ、「胎土・施文手法などに至るまで、非常に斉一性が強い」。
ぼくたちのイメージに引き寄せてみる。
・刷毛目状の整形は、繊維を思わせる。
・籠目文で、口縁部が肥厚するが、新段階でほぼ消滅するのは、貝表現から麻表現が強まる過程を示している。その籠目も変形簡略化されていく。これは、デザイン化であると同時に編み技術の発達を意味するかもしれない。
・口縁部の突起は、籠目で波状口縁となり、点刻線では山形突起になる。
「蝶」表現は普遍的ではなく、その表現も波状だったり、山形だったりしている。「波状」は、刺青の三角文様を思わせるし、山形は蝶形骨器の模写に見える。
室川貝塚から出土した蝶形骨器と荻堂式土器を並べてみれば、土器に蝶が宿っているのがよく分かる。そしてこれは、琉球刺青の文様モチーフと同一である。