スセン當式と呼ばれる奄美の土器。
これらの曲線を主体にした施文は、ベニワモンヤドカリの背部に着目したものではないだろうか。西原海岸の口縁部は、白い前甲とその横の脚のように見える。
ベニワモンヤドカリは、平べったくイモガイ、タカラガイ、マガキガイを宿貝として好む。サンゴ礁に棲み、小さい。スセン當式の段階は、ヤドカリを通じて地母神の概念が形成されたと考えてきたが、これらのことは、スセン當式と並行する沖縄のオウギガニ(大当原式)とよく呼応している。
前甲をひっくり返した形が、あるいは胞衣として意味を持ったかもしれない。
スセン當式の手前に位置づけられている万屋泉川遺跡からは、「小形で食用にしたとは考えられない」とされているコシマヤタテが出土している。コシマヤタテの殻に走る白の線は、ベニワモンヤドカリの縞とよく似ている。また、泉川遺跡の貝類は個体数がカウントされていないが、マガキガイが多量に出土したと報告されている(「万屋泉川遺跡」)。
ユウナの花は、夕方海に散って赤い熱帯魚に化身する。この熱帯魚をぼくたちはキンギョハナダイと見なしているが、キンギョハナダイの元の姿としてもベニワモンヤドカリはぴったりだ。この後、ユウナの花は後続する兼久式土器の底部にスタンプされることになる。