ニューブリテン島とニューギニアに、他界が時間性としてしか存在せず、いまだ空間化されていない例を見ることができる。これは、他界はないと言っても、遍在していると言っても同じである段階だ。
例1.死霊はどこにでもいるが、目には見えず、定まった住所を持たない(バイニング族、ニューブリテン島、p.163)。死者を埋葬はするが、墓穴を塞ぎはしない。野獣に対する防御手段も講じない。弔葬儀礼もほとんど行わない(p.206)。
例2.死霊を意味するninikiという言葉を持つ。ninikiは、「見ることはできぬけれど、ここかしこ、君の回りの空中にいる」と説明する。死者はどこに行ったのかと尋ねると、漠然と地平線の方を指し、「遠くに」と答える。(パプアン、ニューギニア、p.301)。葬儀の仕方を見ると(p.339)、死霊に対する恐怖は感じられない。葬法は、浅い墓穴に埋めるか、台上葬。
他界の遍在は、葬法が無いことを意味しておらず、浅い埋葬や台上葬などの措置が取られている。また、この段階では死霊に対する恐怖もないことが分かる。