男性の秘密結社は歴史的などの段階に置くことができるか。
男たちの秘密結社、つまり仮面結社は、「母権的な循環期」に創出されたものだとする考えがある。つまり、仮面の男たちは悪霊である祖霊たちなのだと信じ込ませることによって女たちを威嚇することにあった。母権制によって確立した女たちの経済的-宗教的優越を動揺させることを目的としたものだ、と。
たしかに仮面結社が、その種の役割を演じた可能性はきわめて高い。しかし、成人式と男たちの秘密結社への入会に際して行われる加入礼的な諸試練の間には、「完全な連続性が存在しているという事実が確認されるのである」。たとえば、オセアニアの若者の加入礼と秘密結社の加入礼は、海の怪物に呑み込まれる象徴的な史の後に再生復活するという同じ型の儀礼を内包している(M・エリアーデ『加入礼・儀式・秘密結社: 神秘の誕生──加入礼の型についての試論』)。
つまり、エリアーデによれば、秘密結社のイニシエーションは、成人式のそれから派生しているのであり、母権制を母体に発生しているわけではない、ということだ。では、秘密結社に固有の契機はなにか。
それは、「聖なるものにより従前な形で参入したいという欲求の存在」、強烈に固有の聖性を体験したいという欲望である。
秘密の仮面結社の固有性もある。
・秘密ということの果たす中核的な役割
・加入礼的試練の残酷さ
・仮面によって人格(ペルソナ)化される「祖霊たち」の祭祀の優勢
・高神の不在
ここでは、エリアーデが「至高の存在」と書いているのを、高神とみなして、こう書くのだが、彼は高神ありきで考えているのか、秘密結社においては、高神の重要性が失われていくのが一般的だと書いている。これは、来訪神が重要な役割を果たしていると見ることができるだろう。
ニューギニア島、アメリカ、アフリカの加入礼は祭司たちまたは仮面をつけた者たちによって主宰される。多くの場合、それは「先祖たち」を演じる仮面をつけた者たちによって取り仕切られる。成人式の加入礼は、次第に呪医たちや仮面結社の秘儀伝承を部族の文脈上で表現するものへと発展していく。それは修練者を部族の神話的物語へ導入することに等しい。もうひとつは、血と性が聖なるものであるという啓示を受ける。
女性にたいする成人式の加入礼は、存在が確認できるが、男性のそれほど広く認められない。男性のそれが集団的であるのに対して、女性は初潮という個別的なものである場合が多い。
女性は共同幻想を対幻想の対象とすることができるが男性はできない。秘密結社の試練を見ていくと、男性が共同幻想を知り、イニシエーションを重ねていく過程は、自己幻想を共同幻想に同一化する過程に見える。
メキシコのウィチョル族の「経験豊かな物知り」に言わせれば、「男たちはかわいそうに、あんなにでもしなければ、知恵に近づくことはできないんだよ。ところが女は自然のままにそれを知っているのさ」(p.143『対称性人類学 カイエ・ソバージュ 5』、というこだ。