国立民族博物館の「イメージの力」展を観ることができた(cf.「参照用「仮面儀礼」一覧」)。なにはともあれ、写真画像でしか見たことのない仮面たちを目の当たりにしたかった。画像では伝わらないものを体感したかった。
さすが現物はすごい迫力で、目的はなかば果たせた。残るのは、展示は人類の仮面の一部であるため、お目当ての仮面たちの半分にも出会えなかったことだ。けれど、これは当たり前のことで、失望ということにはならない。実際、満足したし、もう一度、行けるものなら行きたいとさえ思う。
写真は、電池の残量が気になって、特に関心の高い太平洋をめぐる地域に偏ったが、見渡して、それぞれの地域の癖(身体性)のようなものは感じることができた。うまい形容が見つからないが、アフリカは無骨、オセアニアは植物的、南アジアは曲線的。北アメリカはデザイン的で、南アメリカは色彩豊か、オーストラリアは高密度の線。
名前は知っていたものでいえば、イアムトル族のアバン(ニューギニア)。アバンは、成人儀礼であるワニ儀礼のなかに登場して、少年たちを棒で叩いたり、耳たぶに穴を開けたりして、試練を与える。また、子供が駄々をこねて親の言うことを聞かないと、両親が相談して、アバンに頼んで、子供を脅したりもする。きめ細かく作られているのが印象的だ。
同じくイアムトル族の神像つきの椅子「カワ・トゥギトゥ」。
イアムトル族のサアヴィ。どういう役割を果たすのかは知らない。
同じくイアムトル族のカプダマ。象?
シャチの背びれがついた仮面。オウェキーノ族(推定、カナダ)。陸の王が熊なら、海の王はシャチだということにかかわるのだろう。シャチ風なのは背びれだけでなく、顔も魚類化している。
これは愉快な仮面。病気治療儀礼だというから面白い。しかも嘔吐向けと来た。(サンニ・ヤクマの仮面。シンハラ族、スリランカ)。
似た感じのある、クニャー族(マレーシア)狩猟神の像。動物の上に人間が乗っている。
ニューギニア、ニューアイルランド島の神像マランガン。左は神像「クラブ」。マランガンは、葬送儀礼や成人儀礼に用いられる。何ヶ月もかけて制作されるというのがよく分かる。
ニューギニア、カプリマン族。精霊像タジャオ。怪獣メトロン星人に似ている。メトロン星人のもとはダジャオかもしれない。
同じくカプリマン族の精霊像付き机。
硫黄島のメンドン。これも巨大だった。こうしてみると、バイニング族のカヴァットに似ていると思う。
ミクロネシア。タプアヌの男女。アンガマを思い出させる。
ニューギニア。セピック河流域。ワニの彫像。ワニの口は大きく開いていた。5メートルほどだろうか、長い彫像だった。三枚目はその後部。両端でワニと人間がひとつながりになっている上に、顔と背にも人間が埋め込まれている。「ワニ-人間」だ。
アベラム族の祖先像「ングワルンドゥ」(オーストラリア、アボリジニ)。ワニの彫像もそうだが、この祖先像も男根が巨大なのが特徴的だ。日本でいえば、縄文の時代精神に近いのだと思う。
ニューギニアのセピック河流域。割れ目太鼓。成人儀礼を行う小屋に置かれている。太鼓というから、叩いてみたくて仕方なかった。
両端の人間像の部分も精巧に作られている。
右のこれはたしか、バヌアツ、マレクラ島の加入儀礼用精霊像。
インドネシア。アスマット族の祖先像。これは女性を象っていた。逆さまの鳥と一体化している。
インドネシア、ジャワ族。右から影絵人形「ワヤン・クリット(ナロド神)」、彫像「ハンプトン」。
これも彫像「ハンプトン」。物憂げさに引き寄せられた。メラネシアの祖先、精霊像や仮面の表情は恐ろしくなく、どちらかといえば物憂げに見えるものが多い。古代の種族が、物憂げさを表現したとは限らないが、苦悶を読み取りたくなる。
バヌアツ、アンブリム島の木生シダ製精霊像。「マゲ・ニ・ヒウィル」。これもなんとも言えない表情。というか、樹木のなかに人間が埋め込まれているように見える。
ニューギニアの装身具と櫂。
トロブリアンド諸島の波きり板付き船首。クラで活躍したのだろう。
カナダ、クワクワカワクゥ族の早変わり仮面。ポトラッチの説明意画像でとく使われていると思う。なんと形容すればいいのか分からないが、相当にデザイン化されている。
これがあの、オーストラリア、アボリジニのグレート・スピリット、虹蛇。
同じくオーストラリア、アボリジニのカンガルーと蛇。