これは、わくわくしながら読んだ。こんな研究がもっと進んでほしいと思う(「南島歌謡に謡われたサンゴ礁の地形と海洋生物」(渡久地健))。
渡久地は、八重山の「ペンガントゥレー節」での漁撈のさまを分析して、「女性―サンゴ礁の内側―底棲生物(ベントス)/男性―サンゴ礁の外側―魚類(ネクトン)」という関係がみられるとしている。
面白いのは、これが生き物の性とも対応しているように見えることだ。
女性
タマミナ(小巻貝):ニシキアマオブネ
ギシクン(貝):リュウキュウヒバリガイ、ヘリトリアオガイ
シンナマ(ミナミキビナゴあるいはアミアイゴの稚魚)
ペンガン(オオギカノコガニ)
ミーガク(海藻):センナリヅタ
シンダミ(オキナワウスカワマイマイ)
貝は「女性」だと了解しやすい。シンナマがアイゴの稚魚であれば、ティダハニと同じ位相にある。マイマイは、「蛇」系のようにも感じるが、殻をつけているから「女性」になる。「蟹」も「女性」になっている。
男性
イラブニ(エラブウミヘビ)
イラブチィ(ブダイ)
ボーダ(ブダイ科)
フクルベー(モンガラカワハギ科。与論ではプクルビ)
フフムチ(ノコギリダイ)
マクガン(ヤシガニ)
ブダイ系が「蛇」系なのは分かる。カワハギやフフムチもそう見なされることになる。
渡久地は、ヤシガニの捕獲がなぜ、男性なのかと問うている。男性に分類される「魚類」ではないし、女性でも十分に捕獲できるのに。
ヤシガニと男性の結びつきを解く鍵は、多良間島の聞き書きが教えてくれるとして、渡久地は書いている。
「ヤシガニ獲りを男女で行って、そのまま夫婦になることもあった。ヤシガニ獲りを女性から男性に頼むのは、愛の告白と捉えることもあった。そのため男性はヤシガニのよく獲れる場所を知っておく必要があった。各自のヤシガニを獲るための「なわばり」(よく獲れる場所)があった」。
これはこういうことだと思う。ヤシガニが「男性」であれば、女性は「貝」だから、両者が合わさると、アマン(ヤドカリ)になる。この「愛の告白」に隠されているのは、トーテムとしてのアマンだ。