この論考はとても面白い。琉球列島周辺の浅海は、「そこに生息する動物たちの顔ぶれをみる限り、明確に熱帯と位置づけられます」。マングローブはその象徴。
黒潮の存在はこのように、亜熱帯沖縄の海とその周辺の生物相を、熱帯系の種が卓越するものにしているのです。
サンゴ礁は、黒潮が運んだ熱帯ともいえるわけだ。
琉球列島の有鱗爬虫類の多くは、冬になっても厳密な意味での冬眠はしない。なぜ、本土の仲間が冬眠するほどに温度が下がってもそうしないのか。太田は可能性として、「代謝を極限まで落とした仮死状態を維持できるほどには厳しくないことが考えられる」としている。
一方で、陸生動物相は「亜熱帯系で固有性が高い」。
黒潮の流れる海域は冬でも比較的暖かく、そのため造礁サンゴをはじめ熱帯域と共通する動物が多く生息し、波打ち際にはマングローブが発達しています。これに対し陸域では冬季は結構寒くなり、そこに生息する動物には熱帯系のものは決して多くはなく、亜熱帯系で固有性の高いものが多数を占めています。
琉球弧とは、熱帯に包まれた亜熱帯の島々なのだ。