市川重治は『南島針突紀行』で、池間島の左手尺骨頭部の文様について、郷土史家の前泊徳正から文様アオヤッダ(アオヒトデ)について聞いてる。
このアオヤッダは、深い海に棲息していて猛毒をもち、これを乾燥させて鼠の出入口などにおけば、その効果は抜群とのことであった。そうした猛毒を一つの効力とみなし、文様化して魔除け、厄除けの象徴としたのである。
この記述からすれば、アオヤッダがサンゴ礁の外部礁斜面にいる。色と毒性からしても、男性動物だ。女性の針突きの左手尺骨頭部にこの文様があるのは、すでにトーテムの意味を逸脱している。トーテム性は保持していたとすれば、「太陽の妻」として女性を位置づけていたのではないだろうか。