著者のモチーフからは離れてしまうのだが、地母神のイメ―ジを掴んでおきたい。
「大母神」「地母神」は旧石器時代から始まっている。狩猟・採集中心の社会では、その後継者として「動物の女主人」「山の(女)神」が崇拝される。
たとえば、アルテミスは「野生の獣を中心としてあらゆる生命の死と誕生、成長を司る、古い地母神の性格を持つ女神であった」。
アルテミスは人間の住む都市にはやってこない。「人間の方が女神に会うために自然の中に出かけていく」。その神話的表現は「産婆」。
へステアは「炉もしくは竈の女神」であり、「永遠の処女神」と目されていた。
藤澤は書いている。
地母神が司るのが「死と再生」という変容の過程であるとするなら、処女神が司るのは「異界に繋ぐ」という「状態の魔力」ではないか。このように、考えると、処女神の霊性というものについて一つの仮説を成立させられる。異界に道を開くことで非現実的な力を現実において身につけさせてくれる、それが処女神の霊性であるという仮説である。
この場合、「異界に繋ぐ」というのは、共同幻想と対の関係にある位相と捉えればいいのだと思う。