オウギガニ段階(大当原期)にある貝類を比較してみる。平安山原遺跡のⅢ群上層のみは、ぼくの判断になる。
同じ段階にあると言っても、5地点に共通するのは、シラナミ、マガキガイ、イソハマグリ、ヒメジャコ、クモガイ、リュウキュウサルボウ、リュウキュウマスオ、オキナワヤマタニシ、ニシキアマオブネの9つのみだ。
なかでも、いわゆるオウギガニらしい貝を当てられない。どれも名だたる貝たちばかりだ。9つの貝のなかで、地点内ではもっとも構成比の低いものが、9つのなかではもっとも高いのはヒメジャコで、これは名だたるなかではオウギガニらしさ(小さくて岩のなかに収まっている)を見せている。
4地点で共通している貝は、サラサバテイラ、シャゴウ、オニノツノガイ、エガイ、コオニコブシ、カンギク、ギンタカハマ、バンダナマイマイ、ハナマルユキ、ハナビラダカラ、アマオブネの11になり、一気に増えるわけではない。しかし、オウギガニらしさは出てくるように見える。
サラサバテイラ、ギンタカハマは、鋏に似ている。コオニコブシ、カンギクは、小さくて尖りがあり、カニとの類似を見せる。ハナマルユキ、ハナビラダカラは、背面の柄や殻口の形が似ている。
共通する地点が3つ以下の貝類で特徴的だと思えるのは、宇堅に多いヒザラガイで、これはオウギガニの腹節を捉えていると思える。しかし、それは、シオマネキ段階にもさかのぼれるものかもしれない。宇堅のアコヤガイ、ナガラ原東のミドリアオリは、オウギガニの扇形が捉えられていると思える。
同じ段階にあると見なされながら、これだけ共通性が低いのは、ひとつには環境による規制が大きいためだと考えられる。そしてそれとは別に、同じ段階とは言っても位相がだいぶ異なる、ということではないだろうか。
宇堅は、アラスジケマンが約8割と圧倒しており、干潟の構成比が高い。ヒザラガイやアコヤガイなど、オウギガニらしさの兆候もあるが、これはシオマネキ段階にあると見なした方がいい。
安田は、山がちな環境とはいえ、2割を占めるオキナワヤマタニシを考えると、すでにヤドカリ段階への移行が進んでいるのではないだろうか。
そこで、宇堅、安田を除き3地点で改めて比較すると、3地点で共通する貝類はぐんと増える。すると、ヤナギシボリイモ、クロチョウガイ、イトマキボラ、ホシダカラ、ツノレイシなど、オウギガニらしさとして言うことができる貝も増えるようだ。