充分な視力を得たとは言えないが、カニ・トーテムの段階を貝類の推移で辿ってみる。オカガニ段階は、前5期から後1期への推移が見られるシヌグ堂、スナガニ段階は、浜屋原式への移行が見られるものの、阿波連浦下層式の様相がみられる新城下原遺跡のⅤ層、シオマネキ段階は、同じく新城下原遺跡の川跡、オウギガニ段階は、平安山原遺跡のⅢ群上層から採ることにする。
マガキガイのようなビッグ・ネームは置くとして、その段階のカニ貝らしさを見せてくれるものをピックアップしたい。
オカガニ段階は、オキナワヤマタニシだ。実は、シヌグ堂の報告書には、「陸産貝」とだけ記されているので、オキナワヤマタニシだけではないだろうが、これに象徴させてみる。
浜辺では、イソハマグリ、アラスジケマン、シレナシジミという豪華な顔ぶれがどれも見られる。これが前5期の流れを汲んでいるのかどか分からない。鋏は、コゲニナ、オハグロガイが担うことになる。
スナガニ段階を象徴しているのは、タママキガイ、スダレハマグリ、イソハマグリなどのハマグリたちだと見なせる。鋏は、イボウミニナ、ヒメオリイレムシロを挙げることができる。
シオマネキ段階は、なんといってもアラスジケマンだ。鋏は、ヒラマキイモガイ、クロミナシ、トクサバイなどが挙げられる。干潟の貝を重視すれば、イボウミニナだ。
オウギガニ段階では、アラスジケマンとイソハマグリは等価になるように見える。鋏は、イトマキボラ、オオミノムシ、ツノレイシが挙げられるが、干瀬にいることを重視すれば、ツノレイシが象徴的かもしれない。
この推移をもっともよく示すのは、貝類の棲息域の推移だ。オカガニでは、陸域(Ⅴ)が圧倒し、スナガニでは、サンゴ礁や内湾・転石(Ⅱ)域が増える。そして、シオマネキでは干潟-マングローブ(Ⅲ)に移り、オウギガニでは、干瀬、礁斜面が増える(3,4)。
確かめなければならないのは、シラナミが徐々にあがっていくことだ。これは、シオマネキになってアラスジケマンが着目されるのと同期したものなのか、サンゴ礁=胞衣の思考の醸成によるものなのか、判断がつかない。
同様にカニ・シルエットを持つクモガイ、スイジガイも、シオマネキ以降に増えることだ。これは、採取数の問題なのか、次第に見出されたということなのか、よく分からない。
雑な目安にしかならないが、指標として挙げてみると、
1.オカガニ
・オキナワヤマタニシ
・イソハマグリ、アラスジケマン、シレナシジミ
・コゲニナ、オハグロガイ
2.スナガニ
・タママキガイ、スダレハマグリ
・ヒメオリイレムシロ
3.シオマネキ
・アラスジケマン
・イボウミニナ
4.オウギガニ
・アラスジケマン、イソハマグリ
・ツノレイシ
ということになる。