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Channel: 与論島クオリア
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「アマミキヨをめぐる問題」(吉成直樹)

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 まだグスク時代以降に取りかかる余裕はないのだが、アマミキヨに関することだけ触れておきたい。

 吉成直樹は、集落に伝わるアマミキヨ、シネリキヨ神話で、国づくりをするだけでなく、稲と結びついていることについて、

このことは、琉球王朝神話で稲の由来を語るアマミキヨ(シネリキヨ)神話が民間へと下降したことを示している。そのそも宇宙開闢神話であったアマミキヨ神話に稲が結びつくこと自体、アマミキヨ神話の新たな展開であり、それを取り込んだのは民間ではなく王朝以外には考えられない。

 と書いている。

 吉成はアマミキヨ神話の新旧を、旧がトーテムとしてのアマン神話であり、新は「古層のアマミキヨ神話が王朝神話に取り込まれ、再編成された神話である」としている。

 備忘に、いまの考えを対置しておきたい。旧とされているのは、トーテムとしてのアマン神話だが、新とされるアマミキヨ神話はトーテムとしてのアマンが、高神へと変換されたものだと考えられる。この変換の背景には、農耕があるのは間違いない。アマン・トーテムの二段目のムラサキオカヤドカリ・トーテムのときに、農耕は受容される段階に入っているのだから、アマミキヨ神話は、外部からのインパクトやアマルガムはあっても、アマンをトーテムとした人々の内部で起きていると想える。

 アマンがトーテムとなった段階でアマン神話は生まれ、アマンというよりトーテムが不可能になってアマミキヨ神話は生まれる。稲がそこに結びついていても不自然ではない。そののち、王権につながる人々の神話のなかで、稲を広めたアマミキヨ神話が取り込まれ下位に落とされた、ということではないだろうか。

 なお、新旧のアマミキヨ、シネリキヨ神話が本来、兄妹神かつ原夫婦であったかは不明である。琉球文化圏全域に「兄妹始祖神話」が分布していることを考えると、その神話の影響を受けて変化した後の姿である可能性もある。

 「風によって孕」むところに、アマミキヨがシネリキヨと兄妹であることが示唆されている。しかし、新旧ともに原夫婦ではない。ヤドカリの前にカニがトーテムになった段階でそれは終わっている。


『琉球王権と太陽の王』


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