改めて、波照間島大泊浜貝塚の貝類の段階を推測してみる。
トカゲの段階から、シレナシジミはずっと尊重されている。これは、トーテムの化身を意味するとともに、西表島とのつながりを示しているのだと思える。
そのシレナシジミは、この段階では、いずれシャコガイになるものと考えられている。そして、シラナミ、ヒメジャコ等と、シャコガイ族も連綿としている。これらはひとつながりのものとしてみなせば、複数の層の推移は、サラサバテイラからマガキガイ優勢への変化と見なすことができる。
これらが指示しているトーテムは何だろうか。
想定できるのは、干瀬のオウギガニからイノーのオウギガニという推移だ。10層のヒメジャコは、あるいはシオマネキ段階の名残りをとどめているかもしれない。
9層では、ヤコウガイとチョウセンサザエは、殻と蓋が対をなすように出ている。これは、腹部と鋏への同等の関心を示す。4層からは、蓋が優勢になる。これは、コモンヤドカリからムラサキオカヤドカリへの変化を連想させるが、段階としては早すぎる。
また、4層、2層では、サラサバテイラとオニノツノが対をなすように見える。
放射性炭素から得られている年代は、
10層 1720±65
11層 1510±70
6層 1370±65
だから、10層から2層にかけて数百年の時間を見積もれることになる。この間、オウギガニのみというのは長すぎる気もする。10層のヒメジャコやヒメイトマキボラは、シオマネキを示しているのかもしれない。
大泊浜貝塚から出土している石斧は小形で、シオマネキやオウギガニを示すように見える。2層のベッコウザラの小ささもオウギガニを示唆すると見なせる。
これらの貝類は、ヤドカリ段階と見分けがつきにくい。しかし、なかでも一貫して優勢であるシャコガイたちはヤドカリっぽくない。つまり、シャコガイたちもその形態はオウギ型と見なされている。