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Channel: 与論島クオリア
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54.「産水と死水」

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 第三章、「死と再生」。第一節、「産水と死水」(酒井卯作『琉球列島における死霊祭祀の構造』)。

 水は、火の神と同様、あるいはそれ以上に、人間のセジ(霊)づけに大きな役割を果たしている(p.395)。

 家ごとに所属する井泉(かわ)。婚姻での入家で行われる「水盛り」、親との別れの「水盃」。

 水盛り、あるいは水撫(うぶな)でというのは、いいかえれば自らの帰属を示すための水祈願。「水は内地の習俗では想像を超えるほどの密度の濃い信仰を内蔵している(p.396)」。

 生の終焉である死水も、この産井から水をとる。
 産水(生まれて初めて使う水)、湯灌(葬儀に際し遺体を入浴させ、洗浄するこ)、洗骨で、同じ用語が使われる。
 たとえば、伊是名島。産水はウイミジ、湯灌もウイミジ、洗骨も産井からとる(p.402)。これは再生信仰によるものだろう。

 大島竜郷赤尾木。
 湯灌用の水はなるべく遠くの井泉から汲んでくる。水汲人と逆剃刀を当てる人との問答。
 「その水は何水か」
 「これは死水です」
 「その水は何水か」
 「これは死水です」
 「その水は何水か」
 「クンミジィヤ スィディルミィジィ(この水は生き返る水だ)」
 この答えを聞いて初めて水を受け取る(p.403)。

 チンシダチャー(膝抱人)の例(p.405)。

 「死を再び生以前の世界に戻そうとする信仰がその支えになっているような気がする」(p.407)。


 


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