親の骨に子どもの血を滴らせて親子の判定をする滴血の信仰が琉球弧にも見られる。
事例1.(洗骨において-引用者注)最も近親のもの湯を以て其骨を洗ひ、悉く之を瓶(内地の水瓶に類して蓋に小孔数多あるもの)に入れ、若し其骨数不足の時は女子或は父母の指頭を刺血し、近傍の骨に点附し之を探求するなり(是れ親子兄弟お血液は其骨に浸染するとの言伝へによる)。(林若吉「宮古島の洗骨」1895年)
事例2.右手の人差指を切って血が骨につくと自分たちのご先祖だと分かる。(崎原恒新の記録。沖縄島与那原、1977年)
滴血は、人間の血を離れ、動物になると、場面に広がりが出てくる。
改葬
改葬の時、鶏をとって焼いてからその墓に振り散らした。墓石を建てる際もそうした(喜界島羽里)。
改葬の際、鶏を一羽屠り、その血を門におき、肝臓を焼く。改葬が終わると庭に筵を敷いて、その肝臓を小さく切って共食する(喜界島中間)。
改葬や墓石を新たに建てる時は鶏を殺して墓の入口にその血を撒いて、料理して食べた。これを「成就祝い」という(喜界島川峯)。
重病人
重病人がいると、動物を殺して身代わりにした(与路島)。
厄払いの時に身代わりに動物を殺した(請島)。
重病人がいると、動物を殺して、その血と肉を東方に向けて供える。肉は重病人に与える(喜界島志戸桶)。
儀礼
ハラタミ儀礼において、子牛を殺して、骨肉の七切をそこに吊るし、残りは内臓に至るまで各戸に分配し、老人たちは集まって酒盛りしながら共食する。牛の血は木の枝に塗って各家の門の両脇にさした(喜界島手久津久)。
イッサンボ(首の長い藁人形で、神の使者だと信じられている)は、稲を雀や猪害から守るために田に立てられ、注連縄をはり、動物の血や内臓を塗りつける(徳之島犬田布)。
葬列に使われる天蓋にまず鶏の血をぬる(座間味島)。
石敢当を建てる時に鶏を殺して生血を門口に撒いた(喜界島先内)。
骨を墓に移すとき、鶏を殺して墓の後方に埋める(石垣島)。
家の新築のとき、ユタが祈願する前に、建主は鶏を主要な柱に打ちつけて血を流し、この鶏はあとで共食する。「新家(みいや)拝(ふが)み」という(沖永良部島)。
血を重視した、滴血に酒井は、霊魂の蘇生あるいはセジ(霊)づけを見るのだが、共感できる。