アカマタ・クロマタも成人儀礼を兼ねた仮面だが、その側面からの例をメラネシアに拾ってみる。
事例1.マリンド・アニム族。
マヨ祭儀の成人儀礼のなかで、仮面仮装の結社員によって神話が演じられる。(cf.「イェンゼンの「殺された女神」」)
事例2.トーライ族
成人儀礼のなかで、仮面のトゥブアン、ドゥクドゥクが少年たちを痛めつける先陣を切る。(cf.「トゥブアンとドゥクドゥク」、「ドゥクドゥク祭儀の過程」、「マヨ、ドゥク・ドゥク、アカマタ・クロマタ」)
事例3.イアトムル族(セピック川中流域)
成人儀礼であるワニ儀礼のなかで、仮面のアバンは、少年たちを棒で叩いたり、耳たぶに穴を開けたりして、試練を与える。(福本繁樹『仮面は生きている』)。成人儀礼では、少年たちは背中にワニを模した刺青を入れられるが、その傍らにはワニの彫像も置かれているのだと思う(cf.「「イメージの力」展、見聞記」)。
事例4.ニューアイルランド島北部。
一連の儀礼とその儀礼で使用される仮面や彫像を包括的に指し示すのに、マランガンという呼称が用いられる。 マランガンの儀礼は、基本的には死者を悼む葬送儀礼であるが、同時に少年たちのイニシエーションも兼ねている。透かし彫りを多用した複雑な構造を持つ仮面や彫像などは、個々のマランガンの儀礼毎に何ヶ月もかけて制作される。 しかし、儀礼が終われば, それらの仮面や彫像は廃棄されるか朽ち果てるままに置かれるかのいずれかである。(「仮面とプリミティヴィズム」~プリミティヴ・アートとしての仮面の魅力~梅本涼)
マランガンの彫像は、「イメージの力」展で観ることができた。(cf.「「イメージの力」展、見聞記」)。