吉成直樹は、加計呂麻島の各シマのオボツの位相を整理している。
「瀬武」が空欄だが、オボツという言葉は知られていない。いちばん高い山はユミシヤマといい、ここに高千穂神社の神を勧請している。吉成は、「天から下りる神の観念があったのかもしれない」と書いている。
「佐知克」の場合、神山に降りるとは言うが、それをオボツ山というかどうかは知らない、という。
「薩川」では、オボツ山にはいつも神がいて、神はすべてオボツ山から迎える。
これらか分かることを列記してみる。
1.遠隔化された他界が、オボツ山に該当する。
西阿室、須子茂、実久、武名、於斉、阿多地、薩川
2.上記のうち、オボツが、「御嶽」の役割も果たしている。
阿多地、薩川
3.かつての他界が、オボツ山である。
嘉入
「阿多地」で、オボツ山が「御嶽」も兼ねることは、そこにイビがあることからも分かる。吉成の聞き取りは、2001年のものだが、オボツの位相はおおよそ確認することができるわけだ。
オボツの呼称は、政治的な側面は持つかもしれないが、地勢・地形としての地名の意味を損なっているわけではない。