アリストテレスの『心とは何か』
『アリストテレス 心とは何か』の翻訳者、桑子敏雄は、「心」と訳したギリシャ語プシュケーについて、これまで「魂」、「霊魂」と訳されてきた言葉を「心」としたことを強調している。何より、アリストテレスは「心と身体をひとつのものとして捉えている」からだ。...
View Article『未開人の性生活』
性交と妊娠との関係についての認識の積極的な欠如が母系社会の基礎になっていることは、『未開家族の論理と心理』から知ることができたから、『未開人の性生活』では、別の側面に目を向けたい。 まず、子供は生理的には父親とは関係のないものとされ、別の氏族に属している。そして、子の成長に伴って父親の役割を果たすのは、母の兄妹たちだ。兄妹の関係を軸に展開されるのが母系社会だと言ってもいい。...
View Article『民俗の思想―常民の世界観と死生観』
谷川健一の『民俗の思想―常民の世界観と死生観』にメモを付けていく。 1.霊魂と霊力 木霊、言霊というからには、タマには霊魂と霊力の二重性が含まれているように感じられる。松村武雄によると、古代日本人の宗教表象として重要なものは、チ、タマ、カミ。血、乳、風など人間の身体生命の維持、ならびに自然の運行を促進させる基本的な要素は古くはチという音であらわされている。 チは、霊力思考の言葉というわけだ。...
View Article『ヒトのからだ―生物史的考察』
動物性器官が、しだいに発達して、これが植物性器官に介入したとき、ヒトに至ってまず、心情がめざめ、この世界が開かれる。次いで、動物性器官のやむところのない発達は、さらに精神の働きをうみ出し、この働きが、逆に植物性器官を大きく支配するとともに、やがては心情とはげしく対立するようになる。つまりヒトのからだでは、このように植物性器官に対する動物性器官の介入が、二つの段階で分かれて行なわれたことがわかる。...
View Article帰来する死霊の位相
死者が、ふたたび生者の居住地にやってくるという例を、棚瀬襄爾の『他界観念の原始形態』で追ってみる。◇メラネシア事例1.種族:モノ島 ・他界:モノ島の北、ブーゲンビル島にある大きな岡であり火山(バレカ)。 ・帰来:身体が回復すると、モノ島に帰来する。農園で働き、踊り、結婚し、子供を生む 事例2.アル島 ・他界:火山(バレカ)。地下と言われることもある ・帰来:帰来する事例3.ブイーム地方...
View Article丹羽佑一の「縄文人の他界観念」
丹羽佑一の論文から、縄文人の他界観に接近してみる。とても面白いのだが、意味を辿りきれない個所があり、理解が不完全なので、分かる範囲で取り扱うことにする。 1.岩手県西田遺跡(縄文時代中期中葉) 環状集落。中心から、墓抗群、長方形柱穴群、貯蔵穴群、竪穴住居群が、同心円状に配置されている。墓抗群、長方形柱穴群は環状に展開するが、住居と貯蔵穴は、北側に偏在する。...
View Article谷口康浩の「祖先祭祀」
縄文時代では「死者は必ずしも忌避すべきもの、穢れたものとはとらえられていない」。ムラの中央広場に集団墓を造営する環状集落の空間構成は最も端的にそれを表しているし、廃屋葬の発達なども死者を身近におこうとする意識の発露であろう。中期以降各地で発達した再葬制も、祖霊に対する特別な意識をうかがわせるものである。...
View Articleシャーマニズムにおける霊力思考と霊魂思考
『シャーマンの世界』では、シャーマン的モチーフとしてオーストラリアのアルンダ(アランタ族)が取り上げられている。 オーストラリアのアボリジニーのなかには、シベリアと同様、霊によってシャーマンがイニシエーションの時に肉体を解体される部族がある。霊がシャーマンを殺し、身体を開いて体内に水晶などの力のある物体を入れるのである。...
View Article屋内祭祀と石棒
縄文時代の屋内祭祀と石棒についての論考を見てみよう。 まず、山本暉久の「屋内祭祀の性格」。 1.居住時点の屋内祭祀。 1)石柱・石壇をもつ住居址 石柱は、石棒とは異なり、人為的な加工は施されない。中期後葉期に認められる。「居住成員の祖霊を祭る役割や豊饒を祈願する祭りの対象とされたものと思われる」。 2)埋甕-幼児埋葬から儀器へ...
View Article「ヒトはいつどのようにして琉球列島に定着したのか?」
伊藤慎二の「ヒトはいつどのようにして琉球列島に定着したのか?:琉球縄文文化の断続問題」。琉球弧の精神の考古学をしていく上で、大事な補助線を引いてくれそうだ。...
View Article「琉球列島貝塚時代における社会組織の変化」
高宮広土と新里貴之による「琉球列島貝塚時代における社会組織の変化」(2013年)。 琉球列島のふたつの稀な特徴。 1.島嶼環境下で、狩猟採集民が長期間継続した地域はかなり珍しい。...
View Article『生と死の考古学』
『生と死の考古学』(山田康弘)から確認できることをメモしておく。 縄文時代における人骨出土例の埋葬形態の多くは、単独・単葬。埋葬姿勢は地域差あり。・北海道北部 強屈・東北 膝屈・関東 伸展化・東海 二分化・中四国 膝屈・九州 二分化...
View Article『弥生再葬墓と社会』
設楽博己の『弥生再葬墓と社会』は、とても面白いのだが、時代区分を把握するのにとても苦労するので、下に表を上げておく。 第7章以降を見ていく。 第1節 祖先祭祀および通過儀礼としての再葬 1.祖先祭祀としての多人数集骨葬 堀之内Ⅰ式期までの初期の多人数集骨葬の人骨には性や年齢に偏りがない。廃屋墓を起源に成立した可能性。縄文晩期では性別に著しい偏りをみる場合がある。...
View Article[改] 琉球弧葬法の6類型
考えを改めたことがあるので、琉球弧の葬法の類型を更新したい(cf.「琉球弧葬法の6類型」)。 更新するポイントは二点。・定着以前には、「埋める」ことはなかったと仮定。・定着以前の「埋めない」場合にも、改葬はありえたので訂正。 たとえば、与論島の洗骨は、埋める→改葬のプロセスを経るので、類型6に該当する。しかしこれは明治の強制に依るものなので、それ以前は類型4に当たる。...
View Article『環太平洋民族誌にみる肖像頭蓋骨』
『環太平洋民族誌にみる肖像頭蓋骨』の著者、小林眞は、ぼくの父と生年が同じだが、友よ、と呼びたくなるくらい、この本はモチーフが近しかった。あとがきで、滅多に引用されるのを見たことのない棚瀬襄爾の『他界観念の原始形態―オセアニアを中心として』を熟読したとあるにも親近感を覚えた。...
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