「佐太大神-古代出雲における太陽信仰」(吉井巌)
吉井巌は、加賀の洞窟を貫く「金の弓箭」について、「日出時の太陽光線の神話的表現ではなかったろうか」と指摘している(「佐太大神-古代出雲における太陽信仰」『天皇の系譜と神話 2』)。 吉井は自分でたしかめたわけではなくて、「漁民に聞けば、日出の太陽に正面しているとのことであった」としている。そして、「海から登る太陽が、まっすぐ洞窟の東の入口から洞窟内に侵入するわけである」と書く。...
View Article「刺青師としての女性たち-フィリピン、台湾、そして沖縄」(アナリン・サルバドール・アモレス)
アナリン・サルバドール・アモレスという方の論文。対象にしているのは、「フィリピンのカリンガ州、台湾のアタヤル族の共同体、そして沖縄」だ。 刺青を意味する言葉。 バトク(カリンガ州) パタサン(アタヤル族) ハジチ(沖縄)...
View Article「日本神話の風土性―時間と変容」(谷川健一)
谷川健一は、「日本神話の風土性--時間と変容」のなかで書いている(「國文學:解釈と教材の研究(日本の神話<特集>日本神話の源流)」)。...
View Article『ヤマト文化と琉球文化』(下野敏見)
下野は、トカラ列島以北をヤマト文化圏と呼び、奄美大島から沖縄県全域を琉球文化圏と呼んで、その両方を捉えるのに桜島あたりがいいとしている。「いつもそれを仰いでいるから」とも書いているが、この視点の置き方は面白いと思う。けれど、より本質的にいえば、下野があとがきで書いているように、「日本文化の裂け目」である七島灘に視座を移すのが本来的だろう。...
View Article「亀」の位相
亀の位相の手がかりになるのは、亀がジュゴンと対になって語られることだ。新城島の人は、「ぱなり人は亀の腕、ザンの腕」といわれてきた。 「おもろさうし」では、「久高の澪に ザン網結び降ろちへ亀結び降ろちへ」と歌われ、新城島のザン捕りユンタでも、「ザン捕る網ば 持ちうるし かみ捕る網ば 引きうるし」と対句を形成する。新城島では、ザンを捕りに行って帰った者たちは、「ザンは捕れたか亀は捕れたか」と聞かれた。...
View Articleキシノウエトカゲ
多良間島の兄妹始祖神話が伝えるトカゲ(バガギサ)こと、キシノウエトカゲ。 琉球弧のトーテムのひとつに敬意を表して掲載。(「週刊日本の天然記念物 : 動物編. 32」) 「恐竜王子」というコピーもいいけれど、島人の思考に添えば、きっと「蛇王子」だったのだ。
View Article「奄美群島おもろの世界」(福寛美)
奄美の豊かさについて、福寛美は書いている(「奄美群島おもろの世界」『沖縄文化研究33』2007)。 地方を謡うおもろの中で奄美の神女達の数は群を抜いて多い。このことは、奄美群島が神女祭祀の賑わう地であり、航海守護の神女達の数が際立って多かったことを示す。そのことはまた、奄美群島から出帆する船が多かったこと、そして、航海守護の神事を多くの女性達が彩れるほど奄美群島が豊かだったことを示唆する。...
View Article「もーんくわしりんくわ」(久高島)
久高島の神歌「ビンヌスンヌ、ティルル」では、スクは「もーんくわしりんくわ」と出ている(『南島歌謡大成』)。 ここで、「もーんくわ」は「澪の子」、「しりんくわ」は「砂床の子」と解すればいいのだろう。「しりんくわ」は、あるいは、知念とのあいだの瀬戸と解してもいい。 シラマー(渡名喜島):砂床。 シル(座間味村):瀬戸。 ジル(竹富島):暗礁。 シルジ(奄美大島大和村):砂床。
View Article『扇―性と古代信仰』(吉野裕子)
吉野裕子の『扇―性と古代信仰』を面白く読んだ。考えなければならないと思ったのは、「扇」は「蛇」だけではなく、「蛇と貝」だとしても、扇の祖形の「蒲葵」は、島人が貝に出会うよりも前に、衣裳として蒲葵とは付き合っていたのだから、吉野は初源を捉えているとも言える。 しかし、その段階の蛇は、男性としての蛇ではなく、無性の蛇であったはずだ。...
View Articleシャコ貝の残響メモ
アマテラスのもとの織女が、ホトを突かれて死ぬのは、サルタヒコが貝に挟まれて溺れるのを女性として表現したものだ。つまり、この織女もサルタヒコと同族なのではないだろうか。 イザナミが、自身の生んだ火の神でホトを焼かれて死ぬのは、人間の方が太陽の化身であるシャコ貝をトーテムとし、女神の蛇が存在の根拠を失ったことを意味するのではないだろうか。あるいは、蛇の精霊が性を持つ始まりであったかもしれない。...
View Article『台風の島に生きる』(谷真介)
岩崎卓爾。1898(明治31)年、日本の台風観測の最前線基地として石垣島に創設されたばかりの測候所に赴任。生涯を島で過ごす。 蝶の生態観測にも力を注ぐ。「蝶仙」の筆名はここから。20種を越える新種が報告されている。イワサキコノハチョウ。 間引きされた赤子の墓に、シャコ貝で蓋をしている写真が載っている。『台風の島に生きる―石垣島の先覚者・岩崎卓爾の生涯』
View Article落ちた太陽(カニク)
「言葉をたずねて」のなかで、中本正智は、砂地をカニクというときの、ニは土で、クは処なのはすぐに気づくが「カ」が分からないとしている。 トカラの宝島にもカノク(砂地)がある。また、「草木をやきはらって開墾した畑」という日本列島の「カノ」という言葉がある。 つまり、堆積してできた海岸べりの原野を開墾し、畑にした砂地がカノコ(開墾した処)だったのではないか。...
View Article「「森神」にみる死霊観」(徳丸亞木)
「森」を必ずしも祖霊信仰と関連しない死霊の祭場とする事例は広範に見られる。その死霊は開墾によって拓かれた土地の地霊的な性格も帯びる。そして地霊や水神が動物の姿で表象され、「森神」として祭祀されている例がある。 山口県の美祢郡秋芳町の江原集落。 ヤムシノモリサマ(蛇のモリサマ)とヒキノモリサマ(蛙のモリサマ)。神体は、それぞれ神木と石灰岩柱。モリサマには、守護神伝承と祟り神伝承が併存する。...
View Article『狂うひと ─「死の棘」の妻・島尾ミホ』(梯久美子)
この本は何をなしたということになるのだろうか。本の帯には「比類ない愛の神話を壊し、そして創り直した評伝の極北」という川村湊の言葉が寄せられているが、「比類ない愛の神話を壊し」たことになるのだろうか。しかし、それだとしたら神話の内側にいない者にとってはそこに大きな意味はないことになる。 たとえば、『ザ・ビートルズ...
View Article『母ぬ島 - Mother Islands』(仲程長治)
仲程長治の写真に出会ってから、自分の眼で島を見るのを止めた。もういっそそう言ってしまいたくなるのが彼の写真だ。...
View Articleメンタワイ族の他界観
トライバル・タトゥのある部族として、メンタワイ族を知ったので、彼らの死生観を見てみる(cf.「メンタワイトライバルタトゥー」)。 メンタワイでは、「死者は三日間墓辺をさまよってからあの世へ行く」。「あの世」は場がい島西岸の沖合いにあり、「大きな村」と呼ばれる。「あの世」での生活は「この世」とあまり変わらない。「漁撈や耕作をなすが、狩猟は行わない」。...
View Article16年後の伝播-琉球弧の針突き
タトゥ・アーティストの大島さんに、こんど沖縄のハジチを入れる方がいるのでいかがですか?と声をかけてもらった。もちろんとばかりに、ご自身の映画(cf.『日曜日、すずは口笛を吹いた』(古勝敦監督))でも、主人公の少女の手にハジチを浮かび上がらせた古勝監督をお誘いして、7日の日曜にスタジオにお邪魔したのだった。...
View Article「針突き」消滅の時期
もっと詳細な調査はあるのかもしれないが、手元の『南嶋入墨考』(小原一夫)から、「針突き」の消滅時期を推測してみる。 調査年度は、昭和5~7年とまたがっているので、ここでは昭和5年の値を採ってみる。 各島の被調査者の平均年齢と最少年齢(括弧内)は下記の通り。 喜界島 77(72) 奄美大島 76(68) 徳之島 65(56) 沖永良部島 74(65) 与論島 68(59) 沖縄本島 66(58)...
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