「集団的自衛権の行使容認が日本を平和にする根拠」で分からなかったこと
高橋洋一の「集団的自衛権の行使容認が日本を平和にする根拠」(2015.9.24)は説得的だった。説得的というのは、「集団的自衛権の行使容認」こついてというより、このエッセイがブルース・ラセットとジョン・オニールが"Triangulating Peace"で示した実証に基づいている点だ。...
View Article『新・沖縄ノート 沖縄よ、甘えるな!』(惠隆之介)
「左翼」、「工作」を禁句にして文章を書き起こせば、もう少しリアリティが増すのではないかと思う。基地反対と言えば、それだけで左翼と見なすような筆致では、一個人として辺野古に行ったことがあるぼくなどもきょとんとしてしまうし、「左翼大学教授を発起人として「琉球民族独立総合研究学会」が設立された」などと書かれると、発起人は琉球ナショナリズムを唱えているという半畳も入れたくなる。...
View Article『パクス・デモクラティア―冷戦後世界への原理』(ブルース・ラセット)
ブルース・ラセットは、1946年から1986年の歴史をもとに、二国間の戦争行動について、整理している。軸jは、両国とも民主的である場合と、少なくとも一方が非民主的である場合だ。紛争がエスカレートする確率1.両国とも民主的である場合 武力行使の威嚇まで 0.05% 武力の誇示まで 85.7% 武力の行使まで 57.1% 戦争まで 0.0%2.少なくとも一方が非民主的である場合 武力行使の威嚇まで...
View Article『「空気」の研究』(山本七平)
1977年に単行本化されているから、もう38年経つわけだ。でも、ぼくたちは「空気」から自由になっているわけではない。 山本七平は、こういうことを言っていると思う。...
View Article土器口縁部の文様(伊藤慎二)
カラーで掲載されたものが美しいので、そこから入っていこう。 これは勝連半島の先端、平敷屋(へしきや)のトウバル遺跡から出土した線刻石版だ。長さは87cm。伊藤慎二によれば、頭部付近の文様は、「土器の文様と口縁部突起の形態を写したことは明白である」。...
View Article『台湾―変容し躊躇するアイデンティティ』(若林正丈)
「躊躇」という言葉に親近感を抱いて読んだが、まるで違って、台湾は実に堂々とした歩みをしてきたのだと思った。ここに言う「躊躇」とは独立と言い切ることに対するものだ。 これを読んで感じたのは、日本が琉球を併合するときに、国内問題のように仮象せずに、国家として遇していれば、もう少しすっきりしたやりとりができてきたのではないかということだった。...
View Article『モモトVol.24 (琉球・沖縄の死生観)』
琉球・沖縄の時代と世代をつなぐワンテーマ・マガジン、「モモト」の24号のテーマは、「琉球・沖縄の死生観」。ここに、「珊瑚の島の死生観」と題した文章を寄せました。 文字を持たなかった時代の琉球弧の精神史に取り組んでいるので、ぼくには琉球弧の死生観というテーマはぴったりでした。また、母の他界の直後に執筆の時期が来ましたので、そういう意味では母の追悼文のように書けたのも幸せなことでした。...
View Article『沖縄・自立と共生の思想―「未来の縄文」へ架ける橋―』
川満信一の『沖縄・自立と共生の思想―「未来の縄文」へ架ける橋―』(1987年)から、表題の講演と独立論に関する文章を読んだ。 個別の中身は、よく分からないところもあるけれど、川満の視点はよく共感できるという印象だった。...
View Article「「日本国家」を相対化するということ」(岡本恵徳)
川満信一、新川明を経て、こんどは岡本恵徳のいくつかの論考を読み、瑞々しい繊細さを感じた。ここでは、「「日本国家」を相対化するということ」(1972年)を取り上げてみる。...
View Articleニライと「根の国」
福寛美の整理をもとに、ニライと「根の国」について、仮説しておく。 福は、『沖縄と本土の信仰にみられる他界観の重層性』のなかで、ニライと「根の国」の相似性について、整理している。 ニライ 1.祖神のまします聖域で、そのためにすべての根となり基となる所。根所。 2.死者の魂の行く所。穢れた底の国。 3.地上に豊穣をもたらすセヂ(霊力)の源泉地。 4.海の彼方の楽土。常世の国。 根の国 1.黄泉の国...
View Article『古琉球の思想』(比嘉実)
比嘉実の『古琉球の思想』が面白かった。 比嘉は、ここで「古琉球の思想」を、これであると明言しているわけではないけれど、推し測ると、「上り太陽どぅ拝むどぅ下り太陽や拝まぬ」という諺にしめされるような、「若太陽(わかてぃだ)」と位置づけているようにみえる。...
View Article『現代文学にみる沖縄の自画像』
書名が示すとおりの「沖縄の自画像」を知りたくて読んだのだが、そういう本ではなかった。もとより、琉球新報企画の「戦後を読む」という連載として書かれているのだから、個別の作品の紹介に留まるのはやむを得ないのかもしれない。 ただ、それでも単行本化に当たっては、著者、岡本恵徳によるこれら作品を通じた自画像作成の試みは期待したかったところだ。...
View Article「「祖国」意識と「復帰」思想を再審する」(新川明)
『沖縄の自立と日本』(2013年)は、現在に近い時点で出されたものなので、新川明の視点への理解にいくらか近づけそうな気がした。...
View Article「沖縄の自立と日本の自立を考える」(座談会)
大田昌秀、新川明、稲嶺惠一、新崎盛暉の座談会が面白かった。県知事経験者ふたりを交えて、これだけ日本を相対化した議論ができるのは、沖縄だけじゃないかと思える充実した内容だと思う。後半の座談会をメインのコンテンツにして、各自の論考は後半に、小さ目の字で展開しても、本の力を損なわないと思った。 そのうえで、感じたことを備忘しておきたい。 まず、大田がしきりに言う言葉が気になる。大田...
View Article死穢と他界
棚瀬襄爾の『他界観念の原始形態』から、葬制における死穢が存在する場合の他界の所在を一覧化してみる。 確かめたかったのは、「聖なるもの」が「穢れたもの」へと反転するのが、「生と死の分離」の前に起きるかどうか、ということだった。...
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